第19回ショパンコンクールが終わったので、感想を残しておこうと思う。小林愛実にはまった前回と比較すると、今回はおとなしく見ていたつもりだったけど、書き始めたらすごく長くなってしまった。
①ショパンコンクールはオリンピックではない
オリンピックではない、というのは、音楽に明確な審査基準なんてないよなぁということでもあり、商業主義におかさせれている場であるということを、今回も感じたということである。特定の審査員の弟子が強い状況はやはり問題があるように思うし、そのかげでどうも日本人は臨時のいすみたいなものを与えられているような気がする。でもピアノはスポーツじゃない。プロとしてお金にならなければしょうがない、というのはどうしようもないところなのかもしれない。
でもテクニックにつっこみどころがあっても、じーんとしてしまう演奏があり、また逆もある。私の中ではそれは明白であり、じーんとさせるピアノが最終的にお金になると思うのだが、私が思っているほど重要視されていないようだ。
②ショパンコンクールは大学受験じゃない
天才に飛び級を積極的にさせる西洋型と、子供のころから集中的なエリート教育を行うアジア型、両者の組み合わせの結果と思うが、たくさんのアジア(主に中国人)の10代がショパンコンクールに登場した。すばらしくきれいな音、音階などすばらしいテクニック、歌心、とても気持ちよく聴ける演奏が多かった。牛田智大さんの子供の頃のような感じだが、当時の牛田さんよりテクニックは優れているかもしれない。日本の音大生でこのレベルの人はなかなかいない。そんな高いレベルがごろごろして、何が何やら分からないような感じだった。
問題は演奏が誰かの模倣のように聴こえること、先生に言われて大学受験の対策みたいに弾いてるように思えること、天国の音楽みたいに美しく演奏してしまうこと。結局のところピアノを弾いて一生を送るためには、促成栽培は難しいのではないか、と感じた。
③審査方法の変更とポーランドへの尊敬
ポーランドという国は、住むには難しそうなところもあるが、頭の良い国なのだろう。ショパンにせよキュリー夫人にせよ…。ショパンコンクールのポーランド人ピアニストも事務局も審査員もやはり賢い。発言に深みがある。
今回、審査方法の変更はなかなか大胆なアイデアが採用されているように思える。審査員は自分の弟子を審査しない(当然だ)、極端に高い点、低い点が出て、平均点に影響されないよう調整する(これも当然だ)、1次や2次、3次の点も低いパーセントで加味される(ファイナルのコンチェルトだけで決めるべきではないし、それはあらかじめ明示したほうがよい)、ファイナルに幻想ポロネーズを加える(私が心配に思うのは、指揮者が偏向した人物の場合、協奏曲の出来に差が出てしまうことである。ただこのアイディアはいいような悪いようなであった。幻想ポロネーズは大曲であり、コンテスタントは疲れてしまうようだった)
審査方法の変更により、審査員の熱気が高まったのは実は3次だったのではないかと思われる。性欲むんむんの(私にとっては期待外れの)ソナタでファイナルをもぎとったエリックルーと時間をこえて弾いてしまった牛田智大の運命のひらきは実力以上に大きかったのではないか?(牛田さんはファイナルに行ければ入賞が期待できたように思う)審査方法はおそらくまだ改良が必要であるが、ショパンコンクールはこれからも若手の登竜門と呼ばれる、価値を持ったコンクールであり続けるのではないか。
④ショパンコンクール優勝者としてのエリックルー
彼はすでに実力を認められたピアニストである。が、実際のところ、私はシューベルトはエリックルーが小林愛実より優れているが、ショパンは圧倒的に小林愛実が優れていると思っている。エリックルーはショパンコンクール優勝にふさわしいピアニストだが、でも、ショパンコンクールですごく良い演奏があったわけでもなかったし、優勝してもフィーバーが起きるのかは定かではない。優勝者ガラコンサートを開けば、みんな満足するんだろうとは思うが。
⑤その他の入賞者たち
2位のケビン・チェン。ファイナルの幻想ポロネーズが良かった。エチュードOp.10は心意気はよいが1曲1曲はまぁまぁの出来でもあった(そりゃそうかな)。3位のジートン・ワン。入賞後、マンチェリウや小林愛実、多くの人から愛されているのが印象的だった。コンクール中は2次が結構良かったように思う。4位のティンヤオ・リュー。24の前奏曲かな?中国人の神童たちのオリジナリティのない演奏のなかで、はっきりと自分の音楽を出しているところが好印象だった。ファイナルもさわやかで美しかった。ピアニストとして成功する多くの素質を持っているように思うが、例えば桑原さんと比べるとまだまだひよっこである。かわいいから、4位もらえちゃったかな。桑原志織。特に2次が良かった。女性の英雄ポロネーズがこんなにきれいで華やかだったことがあるだろうか。彼女はほんものである。もっと日本のメディアは華々しく彼女の演奏を伝えてほしい。5位、ヴィンセントオン、彼のソナタは入賞者の中で一番良かった。あとはインスタグラムでみたジートンとの連弾ピアノ(カワイピアノでのお遊び?)が良かった。ちょっとマイペースな演奏は気になるが、連弾でちょっと相手をみるしぐさがピアニストらしい。(ジートンもそこが良い)ピオトル・アレクセヴィチ。インタビューでショパンは普遍的な言語だ、という話が良かった。おっしゃるとおりである。演奏も気持ちよくなりすぎないかたさと音楽性があるのが良い。6位、ウィリヤム・ヤン。2次も3次も私はあまり評価していなかったが、ついに入賞している。まぁ私はあまり、癒し系みたいな演奏が好きではないのである。でも評価する人はいるだろう。
⑥名演奏を聴かせてくれたコンテスタント
イーファン・ウー。セミファイナルまで進んだ16歳の中国人。若いが飛びぬけてうまく、ランランみたいな感じである。まだ若いのでソナタは演奏が簡単すぎる感じがしたが、舟歌のような、自然描写のような曲は表現力が光った。
イェフダ・プロコポヴィチ。イスラエル・ユダヤ系のポーランド人。イェフダという名前は、ユダ、らしい。なかなかのミスタッチだが(特にソナタの入りの間違いはおいおいという感じだった)、演奏は良かった。私的には彼のソナタが一番良かった。
ルーベン・ミシェリ。イタリア人。2次予選において、私は結構感動したようであるが、右と左がずれるのが気になったようだ。(忘れた)
ショパンコンクールは毎回思うが、やはり楽しいお祭りだ。出演者のレベルは高く、ショパンは美しい・・・。次は20回!てことは100周年なのか。そのときはもっと世界情勢が良いといいのだが(プーチンもそろそろ停戦してほしい。ウクライナにこだわらず、次のショパンコンクールの入賞者をロシアから出すことをそろそろ考えてはどうだろうか。)